入院生活をより良いものにするために患者の治療方針を決める際には、患者の情報収集が欠かせない。患者を知ることが、情報収集の根底にあるが、患者を知ることの意味を間違えてしまうと、違った方向に努力をしてしまい、すれ違いが生じてしまう。陥りやすい間違いの一つに、看護師自身の主観を交えてしまうことが挙げられる。
例えば、「この患者は自立歩行が難しい」という事実に対し「車いすが必要だ」と判断するケースがある。それでも患者は、入院生活中もできる限り自分の足で歩行をしたいと願っているかもしれない。そんな中、歩行器の有無の確認もせずに車いすを準備することで、患者は落胆し、歩く意思を失ってしまいかねないのだ。
もう一つ挙げられるのが、根ほり葉ほり聞いてしまうことだ。たばこの本数やお酒の量などは、健康管理の情報として把握したい内容かもしれれない。また、趣味嗜好なども情報として知りたいケースもあるだろう。とはいえ、患者にもプライバシーがある。あまりにも詳しく調査すれば、それは逸脱した情報収集になる可能性がある。こと細かに聞くと、これ以上話をしたくないと患者が心を閉ざしたり、クレームにつながったりするため、会話の中で少しずつ自然に情報を引き出す話術を身につけることが大事だ。
また、カルテやアナムネ(病歴)の内容をただ丸暗記することも良い傾向ではない。実際の現場での看護に必要のない内容も頭に入ってしまうからだ。これらの内容は、あくまで参考程度にし、本人の意向を聞いたうえで、その情報を優先的に治療方針に組み込んでいくことが大事だ。